Vol.65 2009. 12. 8.
【師走の八】
「2009日本スプリント地図」

 早いもので、もう12月です。箱根駅伝に行ったのが昨日のことのように思われます。
 今年最後の四季の風となりました。
 
 ところで、先月書き残したことに、私が陸上競技の各種データをもとに目的別に分析したコンピュータ遊びを紹介する、ということがありました。以下、遊びの紹介です。
 ただし、これらの数字遊びも先月も書いたとおり「数学的なものの見方・考え方」からはかけ離れていますので、計算式や証明は割愛させていただきます。
 
 ◆「コントロールテストから予測されるポテンシャルタイム(スプリント編)」
 選手の特徴をつかみ、必要とされる練習から導き出されるであろう仮説を立て、練習計画や目標記録などを設定するのに役立ちます。
 ◆「箱根駅伝登録全選手の実力度診断」
  毎年300人近くのデータ処理は大変ですが、箱根駅伝を観戦するには必携です。
 ◆「都道府県別国体参加選手の実力発揮診断」
  先月の四季の風のとおりです。
 ◆「主要大会スプリント競技実力発揮度診断」
  こちらも先月触れました。
 ◆「年次別日本スプリント地図」などがあります。
 
 他のスポーツでは、
 ◆「波動から次の局面を予想するスポーツ観戦術(野球編)」
 ◆「JRAに負けないレイティング」
 などがありますが、時間をとられることから現在はあまり利用していません。
 退職したらこちら専門になるかもしれませんが…。
 自慢ではありませんが、野球観戦中のサインを見破る、流れを読むなどはお手の物ですし、一昔前はJRAから毎月のお小遣いをいただいていた時期もありました。とかなんとか自慢していますね。
 

 ということで、今年最後の四季の風は先月の続編的内容、題して「2009日本スプリント地図」です。
 
 まずは、分析の仕方から。
 毎回書くようですが、これはあくまでも遊びです。これで論文は書きませんので、研究者の皆さんはむきにならないようにお願いします。
 
 対象とした大会は、@全国インターハイ(男女100m、200m、400m、4×100mR、4×400mR)、A日本インカレ(男女100m、200m、400m)、B日本選手権(男女100m、200m、400m)、C国体(少年A・B、成年男女の短距離種目〔4×100mRも含む〕)です。
 これら4大会に出場している選手を登録都道府県別に(1)参加者、(2)予選通過者、(3)決勝の順位、の3項目をもとに集計し、実力度診断として数値化したものです。
 ただし、インターハイの地区予選は北海道だけが独立していることから、(1)の参加者については無視、国体についてはふるさと選手制度など複雑なものがあるので、あくまでも今年出場した都道府県の選手として整理しました。
 また、準決勝に残る選手の数が16名の場合と24名の場合や予選〜決勝の場合などもありますので、準決勝進出という基準は予選の記録順に上位16名として集計してあります。
 

 
 今年のインターハイで活躍した都道府県ベスト8
 
 1 神奈川( 6) 74.1
 2 埼  玉( 2) 69.7
 3 大  阪( 3) 68.0
 4 静  岡( 1) 67.4
 5 三  重(14) 67.4
 6 千  葉( 5) 66.3
 7 鹿児島( 9) 65.2
 8 愛  知( 4) 64.1
 
 ( )内の数字は、61年の歴史を集計したインターハイスプリント種目の活躍度をみた場合の順位です。(先月の四季の風参照。奥澤による)
 
 歴史的集計(61年間)ではベスト8に入っていながら、今回漏れたのは福岡と東京です。それぞれ24位と11位でした。東京の11位は不振と言えるかどうかは微妙なところですが、福岡はあきらかに不振だったと考えられます。八女工業高校の偉大なる力を今更ながら思い起こします。
 特筆されるのが沖縄です。来年のインターハイは沖縄で開催されますが、それにしても歴史的集計では42位が今年は9位に躍進するという素晴らしいもので、強化の成功例と言っても間違いはないようです。
 高校野球、女子ゴルフに続き、来年あたりから陸上競技でも沖縄旋風が吹き荒れる予感さえします。
 ちなみに、今年の国体男子共通リレーも沖縄が初の決勝進出で優勝をさらっていきましたが、他県は全く抵抗できずにやられたことを思い出します。
 
 ちなみに、岩手は14位(31)54.0、宮崎18位(13)49.6、北海道22位(21)48.4でした。栃木は34位(29)41.2です。(( )内は歴史的集計によるランキングです。)
 岩手は躍進、宮崎と北海道は歴史継承ですが、残念ながら栃木は下降気味です。
 

 インターハイが終了し1カ月ほどしたある日、学校に郵便物が届きました。差出人は三重県高体連陸上競技専門委員長M先生でした。先生とは旧知の間柄でしたが、偶然にもインターハイ宿舎、しかも黒澤尻北高校の宿舎のフロントでお会いし名刺を交換したのですが、そのことを覚えていたらしく、部外者の私に貴重な資料を送ってくれたのです。
 開封してみると、今年の三重の躍進ぶりを歴史的な流れに沿って解説した豊富なデータが満載されていました。
 その資料は、陸上競技部をもつ三重県内の高校の校長にM先生の名前で添書とともに郵送されたようです。添書には、これまでの陸上競技専門部に対する協力への謝辞と共に、今後の協力をお願いする旨の内容が記載されていました。
 方法論はさておき、この熱き心が選手の後を押し、今年の三重の躍進につながったものと思った次第です。

 
 私は栃木県高等学校体育連盟副会長とともに普及強化委員長を仰せつかっております。11月に開催された委員会でこの話をしましたが、各競技団体から代表として出席していた競技力向上委員長がはたしてどれくらい考えてくれたかは知る由もありません。その話をしているとき居眠りをしていた委員長もいたからです。
 多くの委員長は興味をもって聞いてくれたと信じています。しかし、一部の委員長の中には、「そのような話には興味を示さない。今のやり方を根本から脱却する勇気がない。自分が人柱になる覚悟を持てない。」等々、競技力向上を目指す上でリーダーとしての問題点が見受けられました。
 このような事実を「人体宇宙で感じ、広め、実践する感性」のない方には競技力向上などは無理な話ではないかと常日頃より思っているから、思わず書いてしまいました。他意はありません。

 
 

 今年の日本インカレで活躍した都道府県ベスト8
 
 1 愛  知( 8) 77.6
 2 埼  玉( 2) 73.4
 2 大  阪( 3) 73.4
 4 東  京(11) 72.2
 5 福  岡(24) 66.8
 6 神奈川( 1) 64.4
 7 兵  庫(16) 63.8
 8 静  岡( 4) 62.6
 
 ( )内の数字は、今年のインターハイでの活躍度(前項)による全国順位です。
 
 インターハイ60年の歴史で7位の福岡と10位の兵庫は今年の高校生の不振を大学生が見事に吹き飛ばしてくれました。ただし、両県とも学生の登録については調査していません。
 
 栃木は何と10位!です。高校時代は無名だった齋藤を稼ぎ頭に、神山選手、本塩選手がしっかりと付いていった200mの得点が大阪府に続き第2位だったことが大きな要因です。ただし、このような一過性の事象で喜んではいられないことは肝に命ずべきです。
 
 例によってJUVY準メンバーが登録する4道県を見てみますと、北海道は13位とマアマアでしたが、岩手は32位、宮崎は47位と不振です。ここ3〜4年の間の高校生の競技力はどうであったか、各県それぞれに検証しなければならないところです。とはいっても、今年のインターハイから未来をみれば、岩手、宮崎両県ともこれから先につながる兆しは確実に見られますのでそれほど心配することはないようです。特に指導者の素晴らしさを私個人感じているからなおさらです。
 

 競技力は強化の質を落とせばあっという間に転落します。
 難しいことはありません。強化の質とは指導者の「高い温度、正しいベクトル、きめ細やかな指導」です。

 
 お猿の電車は、自分が運転しているわけではない猿が、同じところをグルグル回っているだけです。それを見ている人間は、猿が運転して電車を動かしている、と勝手に思い込んでいるだけなのです。
 実はお猿の電車と同じようなことを私たちもしているのではないでしょうか。
 似ていませんか?毎年同じことを繰り返し、強化をしていると錯覚しているどこかの組織の強化策に。強化は生き物です。
 目に見えないくらい遅遅としていても、とにかく前進していなければなりません。その時に役に立つのが三位一体となった強化の質、つまり個々の指導者の資質なのです。
 
 実は強化策は毎年同じような方法をとることが多いのですが、長期の検証が必要であることを考えると、一定のパターンで進めることは悪いとばかりは言えません。
 ここで問題とするところは中身なのです。組織内におけるスタッフの資質が高いだけではなく、考え方が常に進歩し、なおかつ統一されていることが大切なのです。傍からみれば、同じことをしているように見えるかもしれませんが、やっていること、内容や発想が前進していればよいのです。その結果、スタッフそして選手は自信を持ってやっていくことができるのです。
 強化は「仮説を立て、実践し、検証し、修正を加えて再び仮説」を繰り返しながら完結に近づくのです。それを支えるのが強化の質、つきつめると指導者の資質なのではないでしょうか。難しく考えず「温度、ベクトル、きめ」が、強化の基本と考えればよいだけの話です。

 
 

 今年の日本選手権で活躍した都道府県ベスト8
 
 1 福  島(30 ― 11) 80.9
 2 東  京(11 ―  4) 74.7
 3 北海道(22 ― 13) 68.4
 3 埼  玉( 2 ― 11) 68.4
 5 神奈川( 1 ―  6) 63.1
 6 大  阪( 3 ―  3) 60.4
 7 愛  知( 8 ―  1) 56.8
 8 群  馬(13 ― 12) 53.2
 
 ( )内の数字は、今年のインターハイ―日本インカレの実力度診断数値による全国順位です。
 
 日本選手権では北海道が3位と健闘しています。ここでも前項同様、北海道以外の3県を見てみます。
 栃木 10位 (34−10) 51.5
 岩手 36位 (14−32) 数値現れず
 宮崎 28位 (18−47) 41.6 
 
 栃木は男子200mのおかげでシニア全体の力もある程度維持することができました。岩手はシニアに元気が見られません。宮崎は学生を除いたシニアは力を発揮したようです。
 
 それにしても福島県の強さがひときわ目につきます。福島大学のインカレは多少後退してきているようですが、日本選手権になるとナチュリルの活躍が見事なくらい数字に表れています。
 
 数字に表れるといえばいくつかのパターンがあるようです。
 〈パターン1〉
 高校生より大学生、大学生より社会人というように年齢が上がるにつれて力を発揮する選手を抱えている都道府県で、福島、東京、北海道、群馬などがそうですが、栃木もこのパターンに入ります。 
 〈パターン2〉
  高校から社会人までほぼ同じレベルで推移する都道府県です。安定型と言えますが、レベルが高いところで安定している場合はよいのですが、低いところで推移している場合はいただけません。
 〈パターン3〉
  中移動型ともいうもので、大学生の活躍状況によりIH〜IC〜AJの得点を結ぶ線が谷型もしくは山型になるものです。山型、谷型のいずれの型でも長年続けば強化策には問題があると考えられます。埼玉、宮崎は谷型、愛知は典型的な山型となっているようです。
 〈パターン4〉
  高校生の活躍に比べ、大学生を含めたシニアが不調な型です。神奈川が当てはまるようですが岩手もこのパターンです。 


 多くのパターンを見ていると強化策を考察することができます。
 強化策は、中体連、高体連、学連、実業団など、それぞれの統括機関が中心になって行われます。中体連や高体連は各都道府県が統括できますが、学連は各大学、実業団は各企業あるいは個人に委ねられることになります。
 つまり、中体連や高体連は各都道府県陸協とタイアップすることができますが、大学や実業団に対しては各都道府県陸協が強化策を展開できないのが現実なのです。
 日本の多くは輪切り強化であることは承知の上ですが、よくよく見ているとため息さえ出てきます。
 これほどまでに情報網が整備され、交通手段のスピード化は尋常ではなく、国内の施設設備もほぼ均一化された現在、強化の一貫・一環をまとめられないのはなぜでしょう。
 問題が山積しているのでしょうか。そんなことはありません。
 私利私欲を消した資金確保や資金運用のノウハウを学び、陸上競技のオリジナルマネジメントを確立していけばよいはずです。  
 今まで私たちは陸上競技のトレーニング論が他のスポーツのお手本になるものと自負してきました。ところが、陸上競技界はトレーニング論が先を歩き、マネジメント論が追い付かない現状が見られるのです。もし、そのことが正しければ強化という車はまっすぐ前には進まないでしょう。
 
 例えば、吉永、品田、齋藤が3人そろってアジア大会や世界選手権、オリンピックなどに出場できればJUVYの存在感そしてその価値は高まります。そのことに対する評価をプロ野球やJリーグに当てはめたらどの程度のレベルなのかイメージしてみてください。
 そんなことから強化に関する初歩的マネジメントのイメージできるものと考えます。




 今年の国体で活躍した都道府県ベスト8
 

 
1 京  都 79.6
 2 三  重 68.4
 3 静  岡 67.4
 4 新  潟 64.4
 5 埼  玉 63.3
 5 東  京 63.3
 7 北海道 60.3
 7 茨  城 60.3
 7 福  井 60.3
 
 ( )内の数字は、インターハイ―日本選手権の実力度診断数値による全国順位です。
 
 いよいよ国体の分析です。
 国体はインターハイで活躍した選手はもちろん、少年Bという若い競技者にも門戸が開かれています。また、インカレで活躍した選手が日本代表の胸を借りることができるなど、各県の総合力をみることができる大会といえます。都道府県の実力度を診断するには最もわかりやすい大会と言ってもよいでしょう。
 
 そのような大会で、
 栃木 23位 50.2 
 岩手 29位 45.1
 宮崎 17位 53.2
 となりました。(ここでも北海道はベスト8に入っています。)
 
 栃木は陸上競技天皇杯39位ですが、それは全種目で集計した入賞者の競技得点でのこと。短距離だけを考えると、もう少しレベルは高く、日本の中位に位置しているようです。
 ここでも、本人はもとより私としても不本意な成績に終わってはいますが、齋藤がしっかりと栃木のスプリントをアピールしてくれました。高平といえば北海道、齋藤といえば栃木、という認識を多くの方々に持っていただけるようになってきているのかな、と思います。
 
 宮崎も岩手も頑張りました。宮崎の籾木君や岩手の高須君、下澤田さんもそれぞれの県においてスプリントに限定した競技力のアピールには一役買っていることがわかります。
 
 あらためて国体スプリントを眺めてみます。
 
 全種別にわたって確実に力を出した都道府県は、静岡、新潟、茨城の3県です。この3県は短距離に出場した選手が誰一人として予選落ちしていません。
 また、ある種別に強い力を示した都道府県は、京都の少年女子A・B、三重の少年女子A、静岡の少年男子A、埼玉の少年男子A、北海道の成年女子A、福井の成年男子A、広島の少年男子B、沖縄少年男子Aなどがあげられます。
 

 昨年の国体が終わった直後の話です。
 「京都の短距離のレベルアップのために一肌脱いていただけませんか」
 と、洛南高校の中島先生から依頼の電話がありました。
 一度はお断りしましたが、先生の熱意に負け、今年の1月末2泊3日の日程で齋藤と矢代を引き連れ京都に講習会に行きました。
 短い日数でしたが、縁を持たせていただいた京都が今国体でこのような数字を出してくれたことに私の強い運を感じます。もちろんあのような短期間での講習会が好結果をもたらしたなどとは全く考えてはいません。
 しかし、京都のスタッフから「この選手を見てみてください。」とサブトラックで紹介されたことにも運を感じます。つまり、普通なら見過ごす選手(その選手は優勝しました)の動きを自分の脳にファイルすることができたという運です。
 
 『邂逅には偶然はない。必然であったという思いが残る。そんな思いを感じる小さな幸せを邂逅は連れてきてくれる。』そんな思いが頭をよぎりました。

 
 

 日本スプリント地図
 
 いよいよ結びとなりました。本年度の日本スプリント地図、結果は以下の通りでした。
 
 1 埼  玉( 5) 68.7
 2 東  京( 1) 66.8
 3 大  阪( 2) 65.3
 4 神奈川( 3) 64.5
 5 愛  知( 4) 63.4
 6 静  岡(10) 62.0
 7 京  都(13) 61.3
 8 北海道( 7) 57.1
 
 ( )内の数字は何だと思われますか?
 実は都道府県別全人口順位(平成17年国勢調査による)なのです。
 
 ここまで各都道府県スプリント力を私なりに検証してきましたが、相関関係にあるものが何かわかりませんでした。
 国体の順位が国勢調査に近いものがあるといわれていましたので、スポーツの基本であるスプリントも同じではないかと人口に着目したのは当然と言えば当然の話ですが、調べてみると、やはり近いものがあったのです。
 今回参考にした国勢調査は4年前、平成17年の結果でありますが、大都市のある都道府県は人口の伸びが大きいと言われていますので、(ベスト8に入った都道府県はいずれも大都市を抱えているようですから)、今後もスプリンターを輩出していく確率も高いかもしれません。
 
 ここでも3県を比較してみると、
 栃木 18位 (20) 49.9
 岩手 29位 (30) 45.7
 宮崎 27位 (36) 46.1
となりました。
 データとして付け加えておけば、岩手も宮崎も平成12年の調査から人口が減っていますが、栃木は増えています。それから先の推察は読者の皆さんにお任せします。
 私としては今年のインターハイの結果を参考に数年後を占いたいとは思いますが・・・・

 次に過去3年国体が開催された都道府県と来年から3年後まで国体が開催される都道府県の今年のスプリント力を見てみますと、
 2006年 兵庫 16位 50.8 (人口8位)
 2007年 秋田 32位 43.9(人口37位)
 2008年 大分 39位 42.2(人口34位)
 2009年 新潟 19位 49.7(人口14位)
 2010年 千葉 10位 55.3 (人口6位)
 2011年 山口 31位 44.0(人口25位)
 2012年 岐阜 38位 42.7(人口17位)
となります。これを見ると兵庫と岐阜が人口に比して今年のスプリントが不振だったようです。偶然かもしれませんが、3年前の国体開催県と3年後の国体開催県です。
 これから国体が開催される県の平成17年時の15歳未満の人口を見てみますと、千葉は6位、岐阜は18位、山口は30位です。(2年後インターハイが開催される岩手県の15歳未満の人口は32位です。)
 競技力と人口が相関する、と仮定すれば、2年後にビッグイベントが開催される山口、岩手は15歳未満の人口が少ないということを考えると“人と策”が大きな課題となることが示唆されます。
 

 平成17年の国勢調査の結果日本で最も15歳未満の多い都道府県は東京都の1,424,667人ですが、栃木は285,245人ですから約5倍ということになります。
極端な例で恐縮ですが、話をわかりやすくするため岩手を例にさせていただくことにし
ます。仮に部活動入部率、しかも陸上部で短距離をする生徒の割合が東京と岩手が同じなら、岩手は東京の高校生7.5人に対し1人で戦わなければならないということになります。桶狭間の信長と義元、上田城攻防の真田VS徳川を思い浮かべるとよくわかると思います。岩手が勝つためには、“人と策”つまり「才能ある選手と資質の高い指導者」ということになります。
 是非とも“才能を見つけ、才能を育て、才能を生かす”策を構築し、悔いの残らぬ勝負していただきたいものです。
 
 それにしても、国体の天皇杯順位は考え直してもらわないとこまりますね。残念ながら、人口と競技力の相関は証明されていないようなので、現状を打破することは困難なこととは思いますが…。
 開催県が天皇杯獲得をするためには、かなりの無理をしなければならないことは仕方のないことなのですね。

 

 そろそろ結論を出さないといけません。
 大げさに日本スプリント地図とうたったからには、白地図を塗りつぶしていくくらいの結論を見せなければ、ここまで我慢してお読みいただいた方々に叱られます。
 そこで、地域陸協の平均を出してみました。
 東京の66.8、北海道の57.1は単一都道陸協ですから比較の対象にはなりませんが、地図には色をつけることはできます。
 以下、
 東海 55.7、関東 54.4、近畿 52.7、九州 47.7、東北 47.3中国 45.3、北陸 44.4、四国 40.7
となりました。
 
 ある程度予測された数値が並びましたが、この数字を見て皆さんは何を思われましたか。
 日本のスプリント地図は静岡、愛知を中心とした東海が強く、埼玉、神奈川を要する関東が続き、大阪、京都の近畿までが日本のスプリント勢力の大半を握っていることが判明したのです。
 

 何かに似ていますよね。
 北条、今川、徳川、織田、そして山科・石山本願寺、といえばわかりますか。
 そうです。
 2009日本スプリント地図は戦国時代によく似た地図になっていたのです。
 
 しかし、これからは各都道府県が切磋琢磨し、群雄割拠の状態で日本中が強くなってもらいたいものです。そんな日が続くことをスプリント関係者として楽しみにしています。
 
 
 
 番外編・アジア選手権を斬る!
 
 11月10日から14日まで広州で開催されたアジア選手権。日本代表として齋藤仁志も出場しました。結果は200m3位、1位から4位までの差が100分の4秒という緊迫したレースだったようです。
 このアジア選手権で予選を通過、もしくは予選のベスト16までの選手を対象に実力発揮度を出してみました。(こちらは、先月号の集計方法と同じです。今月のスプリント地図とは違います。)
 
 男女を通じ最も強烈なインパクトを放ったのは、女子100m優勝の福島選手で、数値は86.8と出ました。次いで男子100mを制した中国のZHANG選手、男子400m優勝で同じく中国のLIU選手となり、4番目に女子400m優勝の丹野選手が76.1となりました。男子200mを制したアラブ首長国のALSALFA選手は6番手につけています。つまり、優勝者は見るものに強烈な衝撃を与えていることがわかります。まさしくディープインパクトです。
 
 驚いたのは女子100mと200mの2種目2位に輝いたベトナムのVIE選手ですが、100m・68.8、200m・68.4とほぼ同じレベルで持てる力を発揮しています。連日走り続けての結果は優勝者の陰に隠れてはいますがMVPと言ってもおかしくありません。
 同じ条件(2種目出場で2種目とも予選通過)で男子にも2人いますが、100mでは決勝に残っているものの、100m終了後に行われた200mでは双方とも準決勝で落選しています。
オリンピックで2冠を獲るのは至難の業ではないのです。
 
 日本は女子の実力発揮度が素晴らしく、前述の福島、丹野選手は評価Aです。彼女らに続き高橋選手も評価Bです。最高が塚原選手の評価Cの男子ですが、女子は佐藤選手も評価Cと出ました。ここまでが、私の評価するところの合格ラインです。
 
 日本男子では塚原選手に次ぐのが齋藤ですが、評価はDです。
 タラレバですが、仮に齋藤が2着であれば評価Cでありますが日本男子ではトップに躍り出ます。さらに優勝していれば評価Bとなり、全男子選手をとおしても3番手、男女合わせても8番手まで上がっています。優勝者とは100分の3秒差、2位の高平選手とは100分の1秒差ですから、悔しさが募りますね。
 スプリント種目では「100分の1秒を笑うものが100分の1秒に泣く」という格言が成立しますね。もちろん、笑うとは練習、泣くとは試合です。練習をおろそかにしてはいけないという戒めがよくわかったアジア選手権でした。
 
 アジアのスプリント地図は描けませんが、多少感じたことを書きます。
 男子スプリント3種目で5人以上が準決勝に進出した国は、日本、中国、インドです。決勝進出者を優勝8点〜8位1点形式で得点を集計すると、日本、中国、インドの順になりますが、実力発揮度を見ますと、インド、中国、日本の順になります。
 同じように女子を見てみますと、日本は得点順でも実力発揮度でも断然他の国を圧しています。日本の女子指導陣の夢が小さいながらも花を咲かせ始めた気がします。あとは実をつけるのをまつばかりです。
 
 なお、3人以上の選手が準決勝へ進出した国で注目された国は、男子が韓国とスリランカ、女子はインドとタイと出ています。
 また、男子のサウジアラビアが立て直しにかかると怖い、というデータも出ています。
 
 私はアジア選手権の現場には行っていませんから実情は分かりません。どの国もこの大会に合わせてきたかどうかは不明です。しかし、これからの動向が注目されるアジア選手権でした。
 

 いずれにせよ、来年のアジア大会はどうなるのでしょうか?JUVY関係者が出場したならコンピュータにかけてみたいと思います。
 

 
 ちょっと早いようですが・・・さよなら2009年
 
 まもなく箱根駅伝のエントリーが発表されます。
 ということは、新年はすぐそこまで来ているということです。
 箱根駅伝の実力診断データを片手に千田・小池先生と東洋大の戦力を分析し(昨年遊行寺の坂で勝負を決めた東洋大学の千葉選手は盛岡南高校の出身です)、暮れは北上ですごします。
 北上から帰れば「もう4日寝るとお正月」です。
 

 みなさん  よいお年をお迎えください。

 
           
Vol.1 JUVY 創 設
Vol.2 理想の指導者とは
Vol.3 素晴らしき指導者
Vol.4 回顧・2005年
Vol.5 新春は箱根と共に
Vol.6 凛として颯爽と
Vol.7 眼のつけどころ
Vol.8 視点・感点
Vol.9 思い出に残る一言
Vol.10 新たなる旅立
Vol.11 JUVY誕生
Vol.12 春のスポーツシーズン到来
Vol.13 指導者としての実践力とは
Vol.14 ジュニアとシニア・その1
Vol.15 ジュニアとシニア・その2
Vol.16 わたしなりに言いたいことを…
Vol.17 「眼に見えない力」
Vol.18 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その1」
Vol.19 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その2」
Vol.20 「トーナメント・有限と無限の交差点」
Vol.21 「定石とひらめき」
Vol.22「合同練習会」
Vol.23「国民体育大会」
Vol.24「心・技・体」
Vol.25「再興」
Vol.26「神在り月」
Vol.27「修行」
Vol.28「言霊」
Vol.29「夢」
Vol.30「影響力」
Vol.31「健康」
Vol.32「我家の凜氣」
Vol.33「食」
Vol.34「インカレ」
Vol.35「2007年 JUVY TC前期総括」
Vol.36「今日まで、そして明日から」
Vol.37「国体関ブロ観戦記」
Vol.38「想いを文字で伝えるということ」
Vol.39「人間の運命について」
Vol.40「思いつくまま継走の如く」
Vol.41「広き世界」
Vol.42「スピード・スピード・スピード」
Vol.43「白と青、そして遊」
Vol.44「36−10」
Vol.45「この卯月に思ったこと」
Vol.46「スプリント」
Vol.47「”運”と”付”」
Vol.48「純粋にひたむきに」
Vol.49「オリンピックへの興味・関心」
Vol.50「ラストゲーム」
Vol.51「氣づき」
Vol.52「私見・学校というところ」
Vol.53「チーム」
Vol.54「遠征講習会」
Vol.55「蔵出し その1」
Vol.56「蔵出し その2」
Vol.57「Enjoy Baseball
Vol.58「ふるさと
Vol.59「夢舞台に向かって」
Vol.60「評価」
Vol.61(臨時増刊)「桂月・秋立つころ〜北上にて」
Vol.62「「古都・奈良でのはなし」
Vol.63「「今の若いものは・・・」
Vol.64「「朱夏の61年間と白秋2009」
Vol.65「「2009日本スプリント地図」

Circle-JUVY General Manager OKUZAWA Yasuo