Vol.53(2009. 1. 8.)
【睦月の八】
「チーム

 新年あけましておめでとうございます。今年も皆様にとって良い流れが続きますことをお祈り申し上げます。


   1 BOOK

  本というものを読むにはタイミングというものがありますね。
 師走に3冊の本を読みました。
 
『冒険家』 三浦雄一郎        【キーワード:Project Team
  ご存じ、スキーのキロメーターランセで世界記録を樹立、富士山やエベレストから直滑降したことで有名な著者が70歳に続き、75歳でエベレスト登頂に成功した記録です。                
 高齢者のエベレスト登頂という壮大な計画のもとにチームを組み、目的をほぼ達成した三浦隊の中で、医師やシェルパはもとより多くのスポンサーがプロジェクトの一員であったことがひしひしと伝わります。中高年に勇気を与えるのはもちろんですが、これだけのプロジェクトが一つの目的に向かいながら、うねって進むことに関しても感動ものです。『一人はみんなのために、みんなは一人のために』の最たるものです。
 
『夏から夏へ』 佐藤多佳子     【キーワード:Team JAPAN】 
  2007年に開催された大阪世界陸上4×100m代表、塚原・末續・高平・朝原・小島の5人の代表メンバーにスポットをあてた、著者の想いがこれでもかと入った内容です。                         
 この本では日本の代表選手が世界の大運動会で戦う姿や内面を女性らしい感性で追いかけています。北京でも成果を出した4人ですが、日本のスプリント界がここまでくるのに先達の苦労や彼らを成功に導いた裏方のことに触れてくれればもっともっと感動するのだが、と思うのは私だけでしょうか。
 
『チーム』 堂場瞬一        【キーワード:Pick-up Team
 箱根駅伝の学連選抜チームを描いたフィクションですが、箱根駅伝に詳しい人はノンフィクションのような気分で読める内容です。
 昨年の箱根駅伝では学連選抜が4位と健闘し、「心で繋ぐ」と言われてきた駅伝の襷について一石を投じてくれたのは記憶に新しいことです。時期的にもタイムリーな一冊で、あっという間に読み終えました。今年の箱根の見方が整理できました。

これら3冊の本に共通して「チーム」というキーワードをつけてみました。


   2 CREW

 昨年の北京オリンピックで水泳の北島選手の活躍によって『Team-KITAZIMA』なるものが、何か耳新しいかのように騒がれました。
 しかし、今から20年以上前にC.ルイスとその関係者はTeamをFamilyと呼び関係者をCrewという言葉で表していたこと思い出します。Crewとは乗組員といった意味ですが、船の乗組員と考えるとよいようです。船が岸から離れた瞬間から、乗組員は目的の地まで運命共同体として持ち場を全うしなければならない立場にあります。洋上で我儘を言えば船が目的地に着くのが遅くなるかもしれません。それどころか、目的地に着かない可能性もありましょう。
 Team○○の一員といわれるより、私は何となくではありますがCrewと言われることに魅力を感じます。三浦隊などは命がけ、一人ひとりがまさしくCrewだったはずです。
 
 箱根駅伝の各チームも大手町をスタートしたら、はたして命がけの旅路になるのでしょうか。いや、今年の箱根駅伝が終わった瞬間から旅路が始まるのかもしれません。
 
 そんなことから、伴走者と選手の命運について考えてみました。
   

   3 PICK-UP TEAM−HAKONE
 
 箱根駅伝の学連選抜チームができたときは多くの方々は違和感を持たれたことでしょう。それもそのはず、チームの名誉のために走るという精神性に価値観を見出してきた駅伝は純粋な単独チームでなければならないとの概念があったからです。予選会で敗退し、所属チームからの本戦出場が途絶えてから学連選抜の一員として再びモチベーションを高めることは厳しかったのでしょうか。それとも才能ある選手が限られたいくつかの大学に進学し、箱根の本選出場校と予選会校との実力差が激しかったのでしょうか。
 いずれにせよ、予選会で敗れ本選出場がかなわなかったチームのメンバーが学連選抜の選手として選ばれて走ることが現実になってから随分と回は繰り返されているのです。寄せ集めと言われながらも、複雑な思いを割り切り、モチベーションを高めて走った結果が昨年の4位につながったのかもしれません。
 学連選抜は間違いなく箱根駅伝を変えています。冷静に見ればさらに重要な役割を担っているのかもしれません。

 私にとって、今年の箱根を見る目は優勝候補と言われる大学とシード権を目指す大学の戦い方に加え、学連選抜と伝統校と言われる大学の戦い方を対比しながら観察することでした。 
 結果的に私のデータからみると『中央学院』『大東文化』『東洋』(予測から離れた順です)の3校は素晴らしい活躍でした。この3校に比べ『駒沢』と『東海』の2校は力を出せなかったと感じています。
 
 いったい何がこうさせたのでしょうか。
 以後、あくまでも私のデータからの話です。シード権を獲得した大学はすべて以下の3つの条件があてはまりました。
@ 往路を固めた大学
A エースは2区に配置する、という鉄則を守った大学
B 余計な選手変更をしない、ある意味策におぼれなかった大学(もちろん、エース級の選手が身体の不調で走れなかった大学は論外)
 
 終わってから気のついたことですが、おもしろいことを三つ発見しました。
@ 1区には能力指数の高い選手と低い選手が同居していた。
(結果的には前半のスローペースが幸いした大学があるはずだ)
A 2区にエース級を投入しながら順位を落としても3〜4区で上がっているチームが復路も粘っている。
(シード権を取った多くのチームはこのパターンであった)
B 各大学が学連にエントリーした選手の最高記録が共通の距離となっている。
(総合1〜5位の大学は綺麗に10000mとハーフマラソンに統一されたエントリー表となっている。そのことは、大学内で力関係の基準を選手にはっきり示していたのか、エントリーでの小細工はしなかったのか、それとも偶然か)
 
 チームとして箱根駅伝を見る場合、私的には、
@ 年間を通しての徹底した体調管理と能力の開発(長期)
A 選手の適正確認と適正区間配置(中期)
B 区間ごとの的確な助言と区間ごとの能力の発揮(短期)
がどうであったかを探ります。この長・中・短の関連が狂えばあっという間にはじけ飛ぶ、それが箱根駅伝なのです。
 スポーツの分類からすればまったく違いますが、箱根駅伝は野球に似ているようです。どういうことかといえば、鳥瞰の眼とフォーカスの眼を瞬時に変えながら勝負を見極めたチームが成功をおさめるという点です。逆に言えば、それがわからなければ優秀な指揮官にはなれないということです。
 今回も、マスコミに報道された指揮官のコメントの中で、彼らが本当にそういったとすれば笑止千万のものが含まれていました。本当なら訂正したい思いでしょう。
 「油断があったのかもしれない」
 「実は層が薄かったのです」などです。
  これでは、信頼関係が崩れます。来年のチーム作りにも影響を与えるでしょう。
 
 学連選抜チームは組織的には中期対策から入らざるをえません。
 今年の結果は9位でした。少なくともスタート時点での私のデータからすれば ―伝統校の明治とともに― 予測通りの結果です。
 中期対策から始まってもシード権を獲得できるとすれば、各校ごとに取り組む練習方法での勝負は頭打ち、監督・コーチと選手だけでなく、OBや支持者を含めたすべての関係者と本物の信頼関係の構築という精神的なものが左右する時代になってきているのかもしれません。
 寄せ集めとは全く違う、選手間での不思議な感情が生まれるのかもしれません。まさしく、夏から夏への“TEAM−JAPAN”と同じです。
 
 優勝の『東洋大学』はもちろん、『日本体育大学』『中央学院大学』『大東文化大学』『明治大学』そして何よりもPick-up TEAMの『学連選抜』のおかげで、今年の箱根では素晴らしいものを見ること、感じることができました。


   4 Circle-JUVY8
 
 国別で戦う世界陸上やオリンピックではリレーチームの所属が別であっても誰も違和感はもちません。それはそのようなルールで走るからです。
 サッカーにはクラブチームの世界一を決定する大会があるのに陸上競技にはありません。
 私の現役時代、栃木県にもクラブ対抗という大会がありました。当時、私は佐野スパルタクラブに所属していましたので、クラブ対抗には高校〜大学にかけて何度も出場しています。これだけ総合型地域スポーツクラブが騒がれていながら陸上競技のクラブチームの対抗戦はあまり聞かれませんし、復活の気配もないようです。不思議な話です。
 クラブという組織の曲解と拡大解釈に気をつけながら、最初は2クラブの対抗戦からでも始められないものかと模索しています。現実に大学では行っているのですから。

 『佐野SAC Circle-JUVY8 JUVY-TC』は誰でも入会できますが、総合型地域スポーツクラブとして登録していますので、地域の方々で構成されるのが本来の姿かも知れません。その中で、『JUVY-TC』は「去る人は追わず来る人は拒まず」の精神で運営しています。今後もその方針を曲げるつもりはありません。
 登録問題がありますので、『JUVY-TC』で試合に出場できる者は限られていますが、合宿や練習会での雰囲気はチームそのものです。そのような雰囲気で過ごしていますから、我々内部のものにとって違和感はないのですが、外部から見るとチームとは思えないのかもしれません。
 しかし、ユニフォームはバラバラでも心は一つです。超長期、長期、中期、短期、すべて一緒にやろうと集まった仲間だからです。齋藤が『桐の葉』を着て走ろうが、『日の丸』のついたユニフォームで走ろうが、我々にはランシャツの裏側に付いている我々にだけ見える「JUVY」マークがはっきりと見えるのです。


 Aという選手をBという企業が採用する。
 もちろん、AはBの所属で試合に出場する。
 Aは自分で選んだCというクラブチームでトレーニングを続ける。
 見返りに、BはCに必要経費を支払う。
 Cのコーチは基本的にボランティアで指導する。
 
 こんなやり方が実現すれば、栃木から選手が離れることはない。大学だけが練習拠点ではない。企業チームだけが選手を抱える必要もない。大学や企業そして地域住民と連携を組めばよい。
 
  「今の閉塞感を打破するにはこんなことしかないんだ〜!」

 

 おっと初夢から覚めました。
 
 一歩一歩、牛歩の歩みをするチーム、JUVYを今年もよろしくお願いします。

       
Vol.1 JUVY 創 設
Vol.2 理想の指導者とは
Vol.3 素晴らしき指導者
Vol.4 回顧・2005年
Vol.5 新春は箱根と共に
Vol.6 凛として颯爽と
Vol.7 眼のつけどころ
Vol.8 視点・感点
Vol.9 思い出に残る一言
Vol.10 新たなる旅立
Vol.11 JUVY誕生
Vol.12 春のスポーツシーズン到来
Vol.13 指導者としての実践力とは
Vol.14 ジュニアとシニア・その1
Vol.15 ジュニアとシニア・その2
Vol.16 わたしなりに言いたいことを…
Vol.17 「眼に見えない力」
Vol.18 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その1」
Vol.19 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その2」
Vol.20 「トーナメント・有限と無限の交差点」
Vol.21 「定石とひらめき」
Vol.22「合同練習会」
Vol.23「国民体育大会」
Vol.24「心・技・体」
Vol.25「再興」
Vol.26「神在り月」
Vol.27「修行」
Vol.28「言霊」
Vol.29「夢」
Vol.30「影響力」
Vol.31「健康」
Vol.32「我家の凜氣」
Vol.33「食」
Vol.34「インカレ」
Vol.35「2007年 JUVY TC前期総括」
Vol.36「今日まで、そして明日から」
Vol.37「国体関ブロ観戦記」
Vol.38「想いを文字で伝えるということ」
Vol.39「人間の運命について」
Vol.40「思いつくまま継走の如く」
Vol.41「広き世界」
Vol.42「スピード・スピード・スピード」
Vol.43「白と青、そして遊」
Vol.44「36−10」
Vol.45「この卯月に思ったこと」
Vol.46「スプリント」
Vol.47「”運”と”付”」
Vol.48「純粋にひたむきに」
Vol.49「オリンピックへの興味・関心」
Vol.50「ラストゲーム」
Vol.51「氣づき」
Vol.52「私見・学校というところ」
Vol.53「チーム」

Circle-JUVY General Manager OKUZAWA Yasuo