Vol.33(2007. 5. 8.)
【皐月の八】 「食」
 
                   (1)
 
 我が国では、食に関する問題点が急激に増加してきていることから、平成17年6月に食育基本法が制定され、それを受け、平成18年3月31日には食育推進基本計画が策定された。
 その後、平成18年11月には食育白書なる政府の報告書が作成された。
 いずれも、食育に関する内容が示されるとともに、国民が食に関して“何を” “どのように” クリアーしていかなければならないか、食育推進運動への取り組みが述べられている。
 本県でも、平成18年12月には栃木県食育推進計画を策定し、重点プロジェクトとして「しっかり食べて元気なとちぎっ子」運動を展開し、食育の推進を図っている。
 同時に、平成18年より国では「早寝早起き朝ご飯」運動を、県では「朝食を毎日食べようキャンペーン」を展開し、食を含めた子どもたちの望ましい生活習慣の確立を目指している。
 

                   (2)
 
 一体「食育」とは何なのか。
 食育は内閣府を中心に展開されており、そこの説明によると、
@ 生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの
A 様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること
とある。Aはともかくとして、@はどうも理解しがたい。
 食は生きる上の基本の一つであることに異論を唱える人はいないであろう。しかし、知・徳・体に教育の全てを入れることに無理があるのに、食育が教育の基礎となるべきものであると言われてしまうと、これは無理に無理を重ねていることと言わざるをえない。@では、概念は示した、だから実践方法は勝手に作り上げてくれよ、と言わんばかりの発想が見え隠れし、そのことが理解しがたい理由なのである。
 
 では、食育を推進することにより、どのようなことが期待できるのか?文部科学省の見解は以下の通りである。
@ 望ましい食習慣の形成
A 食品の安全性等に対する判断能力の育成
B 地場産物等への理解
C 食文化の継承
D 自然の恵みや勤労の大切さの理解 

 食育を進めると食に関する問題が多くなるということが、巷間流れている。
 栄養士が増えると栄養に関する問題が多くなる、トレーナーが増えると選手の怪我が多くなる、という大胆な説を唱えた旧知の大学教授がいる。
 あえて、弁解させていただけば、“今までは問題視されなかった細かなことにも皆興味を持つようになってきた” としておきたい。でなければ、栄養士もトレーナーもやりきれない。
 

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 私は、子供の頃から食に関しての興味は人一倍持っていたようである。
 そのことは、中学校時代の練習日誌を見ているうちに気がついた。毎食の食事内容がきめ細かく記載されているのである。人間一度興味を示すと、結構長く続くものである。大学時代はさらに細やかになり、一日の生活をほとんど具体的に記録していた。これは、高橋進・著の「マラソン」に影響を受けた。今で言う、プラン〜ドゥー〜スィー云々などは毎日やっていたことなのである。
 そのようなわけで、食を含めた生活習慣の大切さはきわめて重要なことと位置づけており、一貫して続けていることの一つに合宿の在り方がある。私の考える合宿は「自炊」「生活リズム」の徹底なのである。もちろん毎日徹底する必要があることから、合宿所「司若寮」を作った意図は今更言うまでもない。
 それは試合に行った際も同じである。私は、遠征先ではまずもって宿の食事を点検する。とにかく見渡す。食品も選手の箸の進み具合も。
 遠征前のミーティングでも必ず出すのが「食」の摂り方と「朝」の過ごし方である。その点、良い意味で指導者や選手のわがままを聞いてくれる伊沢旅館のような宿舎が少なくなった。世の流れとは言え残念なことである。このようなことが子供たちの人生に及ぼす影響まで考えている人は希であろう。
 食育や生活習慣を学ばせたかったら、JUVYで合宿し、大会には伊沢旅館に泊まって参加すれば良いのである。机上の空論の食育や生活習慣を教える先生など、尻尾を巻いて逃げ出すか、評論家となってその場限りの面目を保たざるを得なくなるのではないかと思う。


                   (4)
 
 ところで、私は酒の肴に極めてうるさい。酒にあった肴を食べるか、肴にあった酒を注文するか、このマッチングはS先生ゆずりか?
 JUVYの定例会では八下田シェフの存在は欠かせない。畏敬の眼で見ている。鈴木氏のセンスも見逃せないし、川田氏のこまめさにも頭が下がる。彼らの作るつまみに文句を言う輩はクラブハウス永久追放です。
 ところで、皆さん、家でもそうしているのだろうか。聞いても本当のことは答えないであろうが…。
 
 ということで、JUVYの食育は筋金入りである。
 前章に記した文科省の考えの@、A、Dは合宿や遠征で実施していることは既に述べた。
 
 JUVYのキャプテンは有限会社・篠原ファーム友米屋取締役社長の篠原幸雄氏である。Bを無視したらJUVYはなりたたない。
 地産地消こそ、キャプテンのスタンスである。決して軸はぶらさない。皆さんに友米屋の米(ご飯)や大豆(加工品)を食べてみることを進める。間違いない。本物である。
 
 残されたのはCである。Cについては全国(人によっては世界)津々浦々で実践している方ばかりのはずであるが、あえて私感・全国食文化を紹介したい。
 
○札幌のジンギスカン
 私は肉を好んで食べるわけではない。
 しかし、大学卒業後北海道を初めて旅し、品田君にすすめられた、ジンギスカンと生ビールの味は別格であった。ビール園の雰囲気も北海道らしく、北海道で食べるジンギスカンは一時私の肉嫌いを忘れさせてくれた。もちろん、品田君や讃良先生との会話はもっと美味しい。 

○天童の蕎麦
 もともと蕎麦は好物であった。小学校に入学したばかりに、ざる4枚程食し祖父が私の腹を自慢していたのを思い出す。今から考えると、孫自慢より自分の打った蕎麦の美味自慢だったようだ。
 平成8年12月に北海道・東北選抜Jr.合宿が山形県天童で開催された折、運営責任者の五十嵐先生に御案内していただいた店の日本酒と蕎麦は絶品であった。残念ながら店の名は忘れたが、入り口に水車があったと記憶している。
  その後、大学の後輩の名和氏と湯殿山を歩いた帰りに入った蕎麦屋も素晴らしい味であった。この店も名前を忘れた。幻となりそうな山形の蕎麦体験である。

○大原のしば漬け
 佐野高校の大先輩小堀光詮氏がご住職をつとめられる京都・大原・三千院には、アポもとらずに何度も訪れてご教示をいただいた。
 その三千院の入り口で売られているしば漬けは酸味に強い私の口にとても合う。
 恋に疲れたか恋に憑かれたかの真意は永六輔氏に出してもらうこととして、このしば漬けは、比叡〜鞍馬〜貴船〜大原と歩き回った後の疲れた体にしみとおるビールの相棒として漬けられたに違いないと一人納得する。(京都の駅ビルなどでは手に入らないと思います。)

○鶴橋のホルモン焼き
 大阪で日本選手権が開かれた1996年6月。帰りの電車で大阪体育大学の栗山先生にお会いした。当然のごとく、「道草する時間はありますか?」という会話になる。  
 「ホルモン焼きは大丈夫ですか?」と栗山氏。
 「肉よりホルモンのほうが好物です。」と私。
 ということで、鶴橋駅で下車。煙の立ちこめる中、ビールと…。絶品!
 昨年、のじぎく国体の前日、時間を見つけ司馬遼太郎記念館を訪ねた。途中、鶴橋を通りながら途中下車できなかったことにはちょっぴり悔いがのこりますね、Hさん、Sさん。宿舎近くのラーメンを夕食前に軽く一杯食べたい、などと言って、我々の誘いに応じなかったWさんの責任は大ですよ。

○讃岐のうどん
 10数年前、全国学校体育研究大会が香川県高松市で開催された時、当時文部省にお勤めの池田先生を囲んで昔話に花を咲かせた後、仕上げのラーメンならぬ讃岐うどんを食べに出かけた。
 高松ではラーメン屋を探すのは困難であるが、うどん屋ならあちこちにある。暖かいうどんにネギと鰹節と胡麻と海苔を乗せ、生醤油をかけて食べた味はうどんの概念を変えてくれた。
 我家では、大根おろしも乗せるが、残念ながら高松の味を復元できたことはない。

○鹿児島の薩摩揚げ
 鹿児島に初めて行ったのは1972年の国体であったが、その時食べた揚げたての薩摩揚が病みつきとなり、練り物が私の好物の一つになった。
 当時は練習後の空腹をいやすため、夕食までの間のおやつとして食べた記憶がある。つぼ付けと黒砂糖も美味かったが、今では芋焼酎に薩摩揚げが合うことを発見し、(それは当然なのですが)鹿児島産以外の薩摩揚げも食べている。しかし、本心は鹿児島の揚げたてを、というのが偽らざる心境である。
 
 国内の話ばかりでは食文化の紹介としての使命を果たしていない、と言われそうだが、私にとって外国の食文化で紹介できるのはキムチくらいのものですな。
 それよりもお勧めしたい佐野の味を書いておく。決して、全国各地でいただいた味に負けてはいない。
 行く気になれば直ぐにでも行けるはずなので、行ってお確かめあれ。
 
○楓林の「ネギラーメン」(説明不要。何しろ元祖、真似物とは違う。)
○寿司伝の「柚入り烏賊の塩から」(最近柚入りが少ないのが気になる。)
○竹村の「豆腐」(持ち帰り自宅で食べる冷奴もしくは湯豆腐は生醤油少々で十分である。)
○幸雄ちゃんちの春先の「かき菜」、夏の「枝豆」、秋の「塩だけで握ったおむすび」(JUVY会員ならOKだと思います。)
○JRA・WINSさの(?)内にある亀田亭の「塩けんちん」(ただし私の同伴が必要です。)

 そして、今は食することのできない幻の味を3点。

○深夜営業時代の万里の「佐野ラーメン」(ご存じ、読売巨人軍小関選手の実家です。)
○新井屋の「特製餃子」(新井コーチ、御母堂の味を早く思い出して作ってくだされ。)
○舟甚の「おでん」(JUVY初代応援団長・青木初枝さんの味に勝るおでんはどこにもないですな。)

 いかがでしたか。
 食育を難しく考えずに、「楽しく」「美味しく」「迷惑かけず」に食べることができる子どもたちを育む機会を増やそうではありませんか。
 
 私は「楽しい話」と「美味しいお酒」に「心のこもったつまみ」が少々(?)で幸せです。ここに私の食の原点がありそうです。


                   (5)

 大学の指導者やナショナルコーチの味を都会のレストランの味とするなら、私の作る料理は田舎者の手料理である。うまいかまずいかは食べる人の味覚の問題である。
 無理に食べてもらう気もないし、うまい!と言って欲しいわけでもない。
 噂を聞きつけ食べに来る人を大切にし、口に出さずとも定期的に食べに来る人を無二の友とし、もう少しおいしくならないか日夜研究し、誇りをもって田舎料理を作っていきたい。私の目指すおいしい料理、それは「足が速くなる」料理である。
 
 田舎者をこよなく愛する心を持ち続ける同朋に乾杯!
  

 いよいよ、今週末から県高校総体、関東インカレが始まります。
 楽しい話をつまみにおいしいお酒が飲みたいものです。
 参加者諸君!関係者諸君!ともに味わおう!勝ち負けよりも感動を!
  

      
Vol.1 JUVY 創 設
Vol.2 理想の指導者とは
Vol.3 素晴らしき指導者
Vol.4 回顧・2005年
Vol.5 新春は箱根と共に
Vol.6 凛として颯爽と
Vol.7 眼のつけどころ
Vol.8 視点・感点
Vol.9 思い出に残る一言
Vol.10 新たなる旅立
Vol.11 JUVY誕生
Vol.12 春のスポーツシーズン到来
Vol.13 指導者としての実践力とは
Vol.14 ジュニアとシニア・その1
Vol.15 ジュニアとシニア・その2
Vol.16 わたしなりに言いたいことを…
Vol.17 「眼に見えない力」
Vol.18 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その1」
Vol.19 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その2」
Vol.20 「トーナメント・有限と無限の交差点」
Vol.21 「定石とひらめき」
Vol.22「合同練習会」
Vol.23「国民体育大会」
Vol.24「心・技・体」
Vol.25「再興」
Vol.26「神在り月」
Vol.27「修行」
Vol.28「言霊」
Vol.29「夢」
Vol.30「影響力」
Vol.31「健康」
Vol.32「我家の凜氣」
Vol.33「食」

Circle-JUVY General Manager OKUZAWA Yasuo