Vol.17(2006.7.7)
【文月・小暑】 「眼に見えない力」

(1)

司馬遼太郎氏は日本の3大奇策を演じた人物として、源義経、織田信長、高杉晋作をあげています。誰が考えても、「この戦勝ち目なし」と言われる状況にありながら、奇策によって戦局を突破し、日本の歴史が変わるような勝ち戦に持って行った武将であります。彼らは眼に見えない自分の運命を知っていたのでしょうか。それとも、人生の局面における覚悟を決めていたのでしょうか。

宮本武蔵は「神仏を尊び、神仏に頼らず、頼るは己のみ」と言ったと、吉川英治氏は書いています。今からおおよそ400年前、民衆にとっては得体の知れない事は日常茶飯事であり、平穏な人生を送るには神仏に頼らざるを得なかったのかもしれません。そのような時代、武蔵は眼に見えない力より、眼に見える力を身につけるため己を鍛え上げ、その圧倒的な力で闘ってきたようです。しかし、彼の作戦が緻密だったことは有名な話です。このことは、武蔵が眼に見えない力を眼に見える力以上に蓄積していたことがうかがえます。

彼らはどのようにして最終的な基本的作戦を決定していたのでしょうか。彼らは緻密な作戦を積み上げて戦いに臨んだわけでしょうが、結果的には、天才的なひらめきによるモノだったのかもしれません。
しかし、ひらめきとはなんでしょうか。そこに見えない力が隠されているような氣がしてなりません。まさしく、「神の預言」「天からの言葉」といったものが浮かび上がるのです。

(2)

昭和30年代後半の陸上競技専門誌を見ると科学的トレーニングという言葉が頻繁に使われています。科学とは普遍なものであるはずなのに、現在の科学と言われていることからすると、そのころの記事等には〔?〕と思われる記載がないわけではありません。

科学的といっても結果をまとめたものが多いのは現在も変わりないようです。公表されたことから、どのようなことをヒントにして現場で役立てるか、具体的練習手段を開発するか。そのようなことを考えていると、データを鵜呑みにするにはあまりにも危険であり、研究が先か実践が先かに悩まされますが、私は「科学は現場にある」と信じています。

科学として使われる多くのデータは結果ですから、眼に見えるモノです。
もう少し簡単に言えば、小学校に入学してからの身長と体重の推移、これは眼で確認できる成長の一つです。体力テストの数値も眼に見える身体能力の一つとして考えられます。さらにウェイトトレーニングの負荷重量の向上はあきらかに筋力に比例するであろうことから、これも眼に見えるものです。
私は科学的なトレーニングを否定する者ではありません。むしろ科学的トレーニングを歓迎する者です。なぜなら、科学的と言われるものは選手を納得させ、トレーニング計画を立案する際の裏付けになるものだからです。しかし、目標を設定し、そこに迫るための流れは全て仮説であり、眼に見えるモノではないのです。眼に見える日々の結果を確認しながら微調整するにせよ、トレーニングスケジュールの立案は、まさしく見えないモノを予想しなければならない難渋なモノなのです。

(3)
 
ここまでに、眼に見えぬモノについて二つの事を書きました。
一つは自らコントロールすることは不可能であろう運命やツキと称される「神秘的な宇宙森羅万象からいただくパワー」です。

もう一つは、数字や過去のデータでは推し量れない力、すなわち「身体の内面からわき出るパワー」です。

(4)

関東高校に出場する選手の最終チェックを目的とした練習会が、火曜日の夕刻佐野市運動公園陸上競技場で開催されました。私も本練習に間に合うよう高速を飛ばしました。

結果は全員が過労状態に緊張が重なり、「これは間に合わない」と、私は焦りさえ覚えました。すぐに練習内容を変更するとともに、練習を半分以下の時間で終了し、ミーティングに切り替えました。

【関東大会は県大会とは全く違う大会であり、自信を持って臨むほど甘い大会ではない。しかし、JUVYのメンバーには天は神秘な力を与えてくれる。「勝たせてください」とか「インターハイに行かせてください」などと願ったり、思ったりしないこと。】

【JUVYに係わる大先輩は勝ち負けに関係なく、現役時代にはものすごいエネルギーで闘ってきた。そのような先輩の眼に見えない御力をいただきながら試合に出場できることに感謝しなければならない。】

【物質には良い波動(氣)を持つモノがあると言われている。そのような良い波動を持つと言われるモノを身につけ、自分自身を邪氣から守ろう。
私には邪氣が何かわからないが、迷いと考えれば良いと思う。つまり迷いが消えれば余計なことは心に浮かばなくなるから、競技に集中できるはずだ。】

私は、尊敬する方から御預かりしているもので、手製のお守りを作って彼らに渡し、握手し、肩を叩いて送り出してやりました。また、当日の練習会に参加できなかったJUVYのメンバーには人を介して渡すことにしました。

(5)

世田谷区奥沢に「奥澤神社」が存在します。宿舎が近かったこともあり、早朝に参拝しました。同行した松永さんも安田さんも、「この神社の敷地に入るとあきらかに空気のにおいが違う。」と話していました。何かを感じたのかもしれません。

神官にお会いしたかったので、昼に再度訪ねました。自己紹介するためJUVYの名刺をお渡ししたところ、

「私の名前と同じです。」と神官

「字も同じですか?」と私。

「はい。」

偶然とは思いますが、神秘的な体験をさせていただきました。
体が軽くなり、自分の体がヒンヤリとした空気の中に違和感なくとけ込んでいる感覚になったことを、私は今でも覚えています。

このような感覚で試合に出場できれば邪心はおきないはずだから、試合前の選手にこの感覚を伝えてやれば勝ち負けを超越した能力発揮ができるのかな、と思った瞬間でもありました。
 
(6)

私は第2日目から3日間、最終日まで神奈川に滞在し、関東大会を観させていただきました。その間の主な結果は以下の通りです。

【第2日目】
女・走幅跳 1年 平井(県大会2位→今大会4位・本年度自己新) 
3年 菊池(県大会6位→今大会7位・本年度自己新)
400mH 3年 長島(県大会2位→今大会5位・自己新)
八種競技 3年 米沢(県大会優勝→今大会2位・自己新)

【第3日目】 
やり投 3年 上岡(県大会優勝→今大会3位・自己新)
4×400mR 男子 佐野高校(チーム新・予選通過)
女子 真岡女子高校(チーム新・予選通過)

 【第4日目】 
110mH 3年 稲葉(県大会優勝→今大会優勝・本年度自己新)
三段跳 3年 米沢(県大会優勝→今大会3位)
3年 小林(県大会4位→今大会4位・自己新)
3年 成瀬(県大会2位→今大会6位・)
4×400mR 男子 佐野高校(県大会4位→今大会6位)
女子 真岡女子高校(県大会3位→今大会6位)

 なんと、JUVYの3年生はリレーの補欠も含めると全員がインターハイに駒を進めることに成功したのです。JUVYの掲示板をご覧ください。選手の感想が載っています。

下級生で力を発揮できなかった選手がいましたが、勝ったことより大きなプレゼントをいただいたはずです。それは来年わかります。

(7)

一体、何がこのような成果をもたらしたのでしょう

それだけではありません。関東大会の1週間前、筑波大学の斎藤仁志選手は、浪人後の新入生としては驚愕の日本インカレ・スプリント3種目入賞を果たしていました。

関東大会の2週間後、国士舘大学の海老原選手は日本選手権・女子やり投で優勝し、アジア大会の代表の座を射止めました。

同大会で上述の斎藤選手は初出場の日本選手権ながら200mで、予選3位(21”53)、準決勝4位(21”34)、決勝5位(21”15)という快挙を成し遂げ、日本一流のスプリンターに顔を覚えてもらえたようです。(注:斎藤選手の数字の並びに注目してください。)

JUVYの選手の底力はどこからくるのでしょうか。

私は次のように思います。

「JUVYの選手は体も鍛えているが、それ以上に同年代の選手に比べ脳を鍛えている。指導者からのミーティングやアドバイスが脳を刺激し、科学では割り切れない“脳パワー”を引き出している。教える側と学ぶ側が融合し、絶妙なハーモニーを奏でている。」と言ったら言い過ぎでしょうか。

結びになります。

結果にこだわらず、全身全霊をかけて取り組めば、御上(神)の力(宇宙の神秘なエネルギー)をお預かりすることができる。同時に、結果がよくても、全て自分の力とは思わず、お預かりした力を使わせていただいているという心を持つことが大切なことです。

見えない力は、現在の科学では説明がつかないが、必ず存在することを信じ、今後も平穏な心を醸成しながら精進してまいりたいと思います。

前期シーズンも日本ジュニアを残し、無事終了しました。
どうもありがとうございました。
 
次回は【文月・大暑】 テーマは「朱夏の熱き闘い・インターハイ その1」です。

Vol.1 JUVY 創 設
Vol.2 理想の指導者とは
Vol.3 素晴らしき指導者
Vol.4 回顧・2005年
Vol.5 新春は箱根と共に
Vol.6 凛として颯爽と
Vol.7 眼のつけどころ
Vol.8 視点・感点
Vol.9 思い出に残る一言
Vol.10 新たなる旅立
Vol.11 JUVY誕生
Vol.12 春のスポーツシーズン到来
Vol.13 指導者としての実践力とは
Vol.14 ジュニアとシニア・その1
Vol.15 ジュニアとシニア・その2
Vol.16 わたしなりに言いたいことを…
Vol.17 「眼に見えない力」
Vol.18 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その1」
Vol.19 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その2」
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