Vol.16(2006.6.21)
【水無月・夏至】 「わたしなりに言いたいことを…」

平成18年6月9日(金)〜11日(日)
YOKOHAMA・日産スタジアム
日本学生陸上競技対校選手権開催

スポーツは社会全体の動きの中にあって、多くの事象と協調しながら独自性を出して進まなければならない。YOKOHAMAで開催することもそのようなことを考えるといたしかたないのかもしれない。古い人間の私としては、陸上競技のメッカと言われた国立競技場で開催して欲しいのだが…。

JUVY関係者では、斎藤仁志君(筑波大学)が100m6位、200m5位、4×100mR5位と新入生としては大健闘をしました。筑波の短距離代表選手としての6位以内入賞者は成迫君と斎藤君の2名、参加者中1・2年生の短距離6位以内入賞者は法政1年の金丸君と斎藤君の2名、参加者中短距離で複数種目6位入賞者は順天堂の高平君と斎藤君の2名でした。特筆されることは、斎藤君以外の3名は昨年度の世界選手権代表という豪華な顔ぶれだったことです。

しかし、シニア競技者としては、まだGVを取った程度でしょうか。これからが勝負です。GU〜GT(日本選手権)と目指していただきたいと思います。
実は、私も斎藤君も大会数日前までは、1種目に絞るべきではないかと迷っていたのです。しかし、斎藤君は「標準記録を破っている先輩が出場できないのに、棄権するわけにはいかない。つらいかもしれないが、全種目入賞します。」と言ってきました。「それなら、やってみよう。この時点で君は筑波のエースになったのだ!」と私は激励しましたが、まさしくその通りになったのです。

そして、真岡女子高OGの海老原さん(国士舘)は女子やり投げ優勝!こちらは文句なしのGTです。西藤先生(筑波大学名誉教授)も試合後に、「素晴らしい」を連発されていましたが、まさしく「大阪(07世界選手権〜北京(08オリンピック)」が見えてきました。


私が生まれたのは昭和26年の暮れですから、物心ついた頃は、終戦から一息つき、東京オリンピックに向かい高度経済成長のまっただ中でした。そのころの社会情勢を考えると、生きるということに誰もが希望を持てる時代であり、貧乏な暮らしではありましたが、周りにはエネルギーが溢れていたような気がします。そのような中で、スポーツにのめり込むことに「夢がついて回る」のは当然だったと思います。

現在はどうでしょう。社会に夢や希望を見いだせないがごとく、職にもつかず、いたずらに学生生活を長引かせ、惰性で競技をやっているような者が多いと感じるのは、私だけでしょうか。このような状況で、昔の選手に教えるのと同じような感覚で指導しても効果は上がらないのかもしれません。

私が陸上競技を始めた頃は、練習内容が良かろうが悪かろうが、競技力向上のための手段は猛練習しかない、と教えられていたような気がします。一般的には…。

しかし、私は中学から高校にかけて、(失礼な言い方で申し訳ありませんが)町の駄菓子屋のおじさんに、人としての生き方から流れ出るスポーツに対する価値観の中で陸上競技の指導を受けてきました。指導者の名は中田正雄さんと言います。すでに80歳をこえていますが、お元気です。

おかげさまで、大学に入学した当初から中学〜高校時代の考え方が基本になり、競技に対する考え方はある程度確立していたようです。確立されていた基本とは、「強くなるためには何が必要か、そのためには何をしなければならないか」という問題を整理・解決することでありましたが、そのようなことは私にとって苦痛ではなく、むしろ楽しかったことを記憶しています。同時に、品田君という生涯の友を得たことも大きな力になりました。また、そのような積み重ねが、大学卒業後の指導者人生にも大きな影響を与えてくれたと言っても過言ではありません。

一般的には、「努力をすれば報われる」という考え方が存在しますが、このようなことをこれくらい努力すればこれだけの力がつく、という保証はありません。また、同じ練習しているにもかかわらず、強くなる者とならない者が出現します。

学生競技者は4年間の間に、心身の自然な成長での競技力向上が遅々となる時期にさしかかります。個体差はあるでしょうが、学生競技者はそのような事実から逃れることはできません。

 
そこで、学生競技者が強くなっていくためにはどのようなことが必要か考えてみました。

1. 弱点を発見することのできる感性を持っていること。
2. 発見した弱点を補うための方法論を試行・研究・実践する行動力を持っていること。
3. 自分の長所を知り、そのことに絶対の自信を持てること。
4. ヒト・モノとの出会いで、生まれ変わったような人生観が持てること。

しかし、このようなことは自分一人ではとても解決できないでしょう。最愛なる友人と、感性豊かな指導者を持つことが、いかに大切かわかると思います。

他人任せのスケジュールや高校時代の練習内容を繰り返すような、現在の心身に合わない練習を続ければ、競技力向上が停滞するのは当然のことです。そうならないためにも、気づき次第早急に手を打つ必要があります。現実に(私の教え子を含め)手を打たずに現役生活を閉じた選手を何人も見てきました。

JUVYは、あらゆる競技者に対して、その時期に応じた効果的な練習が実践できるよう、モチベーションを高めることや方法論の開発に日夜研究を続けています。どうぞ、遠慮なく御活用ください。


さて、日本インカレを見ながら、漠然とですが、学生競技者の選手生命を崩していくものは何かと考えていました。その結果、単純に以下の点が思い浮かびました。
  
1. 睡眠不足
(携帯電話をはじめとしたディスプレイ機器への傾倒、理由なき夜更かし)
2. 食生活の悪化
(食生活の重要さの認識不足、自ら食事を作ることからの逃避
3. 指導者とのコミュニケーション不足
(なりたい自分のイメージ欠如、惰性の怖さを知らず)

さらに、学生競技者の競技力を迷走させているもの、特に指導者が考えて欲しいことについてまとめてみました。

1. 基礎基本練習が構造化されていないのではないか
2. 競技者の評価は結果で判断し、指導者自身は自己評価をしていないのではないか
3. 競技者への助言に根本療法となるようなものを持ち合わせていないのではないか
4. 指導者の理想と競技者の現実が混濁し、助言が曖昧となっているのではないか
5. 学生競技者の食生活を含めた生活習慣への毅然とした助言がないのではないか

では、学生競技者の競技力を高めるために、指導者はどうしたらよいか考えてみますと、「指導者が元気になること」と「選手を元気にさせること」しかないのではないでしょうか。

そのために、指導者は以下のことが実践できる選手を育成することを提案します。

1. 朝を制する選手の育成
「目覚めが良い、朝飯がうまい」という会話が飛び交う競技者集団を作って欲しい。
2. 日中の活動に覇気ある選手の育成
勉強に練習に深く飛び込み、深く潜る、(水中深く飛び込めば、勢いよく水面に戻り、空中高く跳ね上がります)だから時間を大切にしたい、という思いを持つ競技者になって欲しい。
3. 睡眠時間と疲労回復の関係を計算できる選手の育成
携帯電話を中心としたディスプレイ依存症から抜け出す競技者になって欲しい。
4. 心と体のバランス管理が出来る選手の育成
生活習慣の確立こそ、意志力強化と体調維持の基本であることを理解し実践できる競技者になって欲しい。
5. 競技者支援システムの構築化を目指す選手の育成
組織以外の外部指導者を自ら求めようとする心を持つ競技者になって欲しい。

前回も書きましたが、高3〜大2の時期が競技者の基礎をなす自己確立の最終段階に入っているようです。


5月27日、日本インカレ筑波大学最終選考会が行われるというので、日本人男子として夏・冬オリンピックに唯一出場した(3回)青戸慎司さんと一緒につくばに出向きました。青戸さんと私の付き合いは、まもなく25年を迎えます。オリンピックを目指し、和歌山・佐野・富士吉田・札幌・名古屋等々で合宿をしてきた師弟関係、と言っても彼は怒らないでしょう。
つくばでの青戸さんの言葉を記して今回のテーマを閉じさせていただきます。

「大学1〜2年生までに自己の競技観の確立が必要ですね。それまでに確立する基本が出来ていなければ、大学の指導者が何を言っても理解できないでしょう。
 確立ができている選手に、大学の指導者が自分の考えを押しつけるのも良くないですね。指導者を信用しなくなりますよ。競技者は大人としての付き合いができるようになってきますから、指導者に面と向かっては言わないでしょうが…。
 競技観の確立とは練習だけではありません。例えば、食生活を中心とした生活習慣はわかっているようで、しっかりと実践している選手は意外と少ないようです。食事はある意味トレーニングより大切ですからね。
 斎藤君は、「心・技・体」いずれにおいて良くも悪くもなる境目、競技者としての基礎的な自己確立をしなければならない最終的な時期にいると思います。奥澤先生の適切な助言が鍵になると思います。」


以下番外です。

日本インカレに限らず、ファイナリストの指導者だけに与えられるものがあります。決勝前のサブトラックでの練習。何を、どのようにしたら最高のパフォーマンスを発揮させてやれるかと考えているときの緊張感。更衣をすませ、とりとめのない話をしながら招集所に向かうときの指導者として小さな幸福感。それを、今回は3回も体験させていただきました。

ところが、1週間後の関東高校は緊張と幸福に加え、感動の連続でありました。

次回は関東高校での体験を書いてみたいと思います。

次回は【文月・小暑】 テーマは「目に見えない力の存在」です。
Vol.1 JUVY 創 設
Vol.2 理想の指導者とは
Vol.3 素晴らしき指導者
Vol.4 回顧・2005年
Vol.5 新春は箱根と共に
Vol.6 凛として颯爽と
Vol.7 眼のつけどころ
Vol.8 視点・感点
Vol.9 思い出に残る一言
Vol.10 新たなる旅立
Vol.11 JUVY誕生
Vol.12 春のスポーツシーズン到来
Vol.13 指導者としての実践力とは
Vol.14 ジュニアとシニア・その1
Vol.15 ジュニアとシニア・その2
Vol.16 わたしなりに言いたいことを…
Vol.17 「眼に見えない力」
Vol.18 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その1」
Vol.19 「朱夏の熱き闘い・インターハイ その2」
Vol.20 「トーナメント・有限と無限の交差点」
Vol.21 「定石とひらめき」
Vol.22「合同練習会」
Vol.23「国民体育大会」

Circle-JUVY General Manager OKUZAWA Yasuo

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